多くの場合、病院や診療所(クリニック)の建物は賃貸借契約を結んで賃借することが多いのではないでしょうか。
医療法人設立認可申請や分院に伴う定款変更認可申請の場合、賃貸借契約書の貸主と登記事項証明書上の所有者との繋がりや、契約書や覚書そのものの内容(文言)まで厳しく審査されます。
建物を賃借する場合には適切な賃貸借契約を締結していることが前提で、申請の際には基本的に次のような書類の提出が必要となります。
建物の所有者との間で適切な賃貸借契約を締結していることを証明するために、「賃貸借契約書」の提出が必要です。
別な項で説明しますが、個人開設から法人化する場合には「覚書」を取り交わし、従前の契約を法人へ引き継ぐことが明確であればそれで認められます。
賃貸借契約が実際に建物を所有する者との間で締結されていることを証明するため、登記事項証明書の提出も必要です。
建物所有者=貸主であることを確認するためです。
もし貸主と登記事項証明書の所有者が一致していない場合は、所有者変更のお知らせや家賃振込先変更のお知らせなど、現在の所有者が権利を引き継いでいることを証明する必要があります。
また、転貸の場合は、転貸承諾書のほかに転貸を必要とする理由書を求める自治体が多いです。
医療法人化する場合は都道府県の「認可」が必要ですので、当然ながらその設立前に医療法人を借主とする賃貸借契約書を作成することは物理的に不可能です。
この点、ほとんどの場合は個人を借主とする賃貸借契約について貸主との間で「覚書」を交わすのが一般的です。つまり「医療法人設立認可後に借主の地位を個人から医療法人引き継ぐ」ことを設立認可前に貸主に承諾してもらうということです。
ただ、例えば貸主が大企業である場合、覚書に押印を得るまでに場合によっては数か月の時間を要する場合も実際にあります。
少なくとも医療法人の設立計画が具体的になった段階で事前に貸主へ説明を済ませ、覚書に協力頂きたいことを伝えておくべきでしょう。
医療法人が開設する診療所(クリニック)又は診療所の建物は、本来であれば法人の所有が望ましいとされており、賃貸借はあくまで例外的な位置づけとされています。
したがって、賃貸借による場合は少なくとも「安定的かつ長期間にわたる契約」が必要とさています。
方法としては、契約内容に自動更新条項をつける等の方法がありますが、原契約にそれがなければ覚書で改めて合意を取り交わす等の措置が必要です。